BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『世界の常識 VS 日本のことわざ』

2012/01/05 15:27

週刊BCN 2012年01月02日vol.1413掲載

 新年号らしく、今週は「日本のことわざ」をテーマにした本を取り上げよう。

 ことわざには、それぞれの国(地域)で生活する人たちの慣習や知恵が凝縮されていて、それがいつしか常識になっているものが多い。常識といえば、「日本の常識は世界の非常識」という言葉が幅をきかせている。しかし、日本の常識が世界の常識であったり、世界の常識は日本の非常識というケースもあるはずだというのが、著者の見方だ。

 俎上に乗せられた日本のことわざは50項目。それを(1)世界上のどこでも通用することわざ、(2)世界標準のことわざ、(3)グローバル化で通用しなくなったことわざ、(4)所変われば理解も変わることわざ、(5)世界どこでも理解されにくいことわざ──に区分して紹介している。

 世界に通用することわざには、例えば「郷に入っては郷に従え」がある。海外拠点を設けた際に日本流を押しつけて失敗するのを戒めるのに有用と思えることわざだ。

 少し変わったところでは、「当たるも八卦当たらぬも八卦」。宗教色が薄い日本人が外国の人と宗教の話をするのは荷が重い。宗教よりも占いの話のほうがいいらしい。とくに中国やインドでは占いの話が受けるようだ。

 一方、世界の人たちに理解されにくいものに、「能ある鷹は爪を隠す」がある。「出る杭は打たれる」「雉も鳴かずば撃たれまい」も同類で、日本人の謙虚さを表しているが、国際社会では通用しないと心得ておくべきと、著者は注意を促す。(仁多)


『世界の常識 VS 日本のことわざ』
布施克彦 著 PHP研究所 刊(720円+税)
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