旅の蜃気楼
40年前を思い出させた学園報の記事
2011/11/17 15:38
週刊BCN 2011年11月14日vol.1407掲載
▼その日、同じ千代田区にある皇居で、草むしりなどの勤労奉仕を行う学生たちがいた。この勤労奉仕の活動は一般的には知られていないが、もう長く続いている。私がその存在を知ったのは、伊勢にある皇學館大学でのことだ。大学当時の仲間たちには神職が多い。友人のなかには、宮中の賢所で祭祀に関わる別世界にいるような人もいる。20代の頃、友人に陛下とはどんなお方なのかと質問したことがある。「思わず頭が下がります」と友人は答えた。こちらは新聞記者の生意気ざかりだから、本当かしらとつぶやいたら、「そっと遠巻きにでも接する機会があれば、感じますよ」と返ってきた。
▼今でも定期的に大学の学園報が届く。8月1日号に、こんな記事があった。3月11日は皇居の勤労奉仕の最終日だった。『天皇・皇后両陛下より御会釈と労いの御言葉を賜った後、賜物の伝達式に参加するため宮内庁庁舎に向かいました。伝達式直前に凄まじい地響きが聞こえ地震の発生を知りました。大学へ連絡しようにも携帯電話がなかなか通じません。そんな中、両陛下の特別な思し召しにより、皇居内の窓明館で一泊させていただけることになったのです。』夕刻には両陛下が奉仕団員の体調を御心配くださっていることを伝え聞いた。『翌十二日早朝には皇后陛下が御みずから窓明館へ御越しくださり、「大丈夫ですか」「体調が悪い方はいらっしゃいませんか」と御言葉をかけてくださったばかりか、体調を崩し宮内庁病院へ入院させていただいていた女子団員に御見舞いを賜ったという』(皇居勤労奉仕団長・柴田晃治郎君)。この記事を読んで、40年前の友人の言葉を思い出した。(BCN社長・奥田喜久男)
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