BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』

2011/11/10 15:27

週刊BCN 2011年11月07日vol.1406掲載

 統計・確率といえば、文科系の人間にとって敬遠したくなるものの一つである。しかし、著者は「どんな分野の学問や仕事でも統計学は役に立つので、ぜひ学んでおくべきだ」とアドバイスする。

 まずは、統計の目的から。その一つは、「人々の経験を要約して、それによって人々がその本質を理解できるようにすること」。もう一つは、「その要約された事実に基づき、その他の(おそらく将来の)状況で、どのような結果が得られるかを推計・予測すること」だそうだ。

 なにやら難しげだが、もう少しだけ専門的な解説を続けよう。推計・予測をするのに人間の思い込みを確率とする「主観確率」と、データに基づく「客観確率」がある。客観確率でいえば、宝くじの購入は正しくないことになる。宝くじの期待値(掛け金に対して戻ってくる見込みの金額)を計算すると、わずか40%だからというのがその理由だ。

 日本国民のすべてが深い関心を寄せている放射性物質の拡散に関する項目を開いてみる。「SPEEDI」という推測統計が大きな話題を呼んだが、残念ながら、有効に活用されなかった。政府のなかでも、このシミュレーションデータの本質がきちんと理解されなかったせいだと著者はみている。結果、避難区域は半径何十kmという同心円で区分されることになったが、風向きなどの要素を考慮にいれないデータは実態とかけ離れたものになってしまう。統計・確率は身近な生活と密接につながっていることを実感する例の一つである。(止水)


『統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる』
高橋洋一 著 光文社 刊(740円+税)
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