BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「思考の老化」をどう防ぐか』

2011/10/20 15:27

週刊BCN 2011年10月17日vol.1403掲載

 本業は、「老年精神医学」の精神科医という著者が、老け込んだ考え方にならない方法を説いている。

 カギは、「前頭葉」にあるらしい。大脳は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の四つの領域に分かれており、右半球は左半身の、左半球は右半身の運動や感覚をコントロールしている。

 前頭葉が発達した人は、IQ(知能指数)が高いと思われがちだが、前頭葉の機能はIQでは測れないそうだ。IQが示すのは、正答を見つける「集中思考」の能力(主として側頭葉や頭頂葉が司る)だが、前頭葉が活躍するのは、正解がいくつもあるような「拡散思考」の場面だからというのが、その理由である。

 そして、ここからが肝心なのだが、日本は成長の道を突き進んできた「工業化社会」に限界がきて、「知識社会」の道を歩まざるを得なくなっているということだ。工業化社会では、目標や見本があって、他者の指示や命令を遂行することでビジネスがうまくいっていた。つまり、「問題解決型思考」が重視されたのだ。ところが、知識社会では「問題発見型思考」が求められる。そして、問題発見型思考を担うのは、前頭葉なのである。

 前頭葉の老化は、年齢とともに進むのは間違いないが、若いからといって必ずしも前頭葉の働きが活発とはいえないと、著者は警鐘を鳴らす。好奇心に乏しく、決められたことをこなすだけの人は、前頭葉が衰退するというのだ。

 自らの前頭葉の状態、すなわち思考法を見直すのに最適の書である。(止水)


『「思考の老化」をどう防ぐか』
和田秀樹 著 PHP研究所刊(1600円+税)
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