BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『人は上司になるとバカになる』

2011/09/29 15:27

週刊BCN 2011年09月26日vol.1400掲載

 「あの人は、先輩だった頃はよく相談に乗ってくれたりして、信頼も厚かったのに、課長に昇進した途端に、態度がコロッと変わってしまった。幻滅したよ」などという愚痴は、会社でよく交わされる。本書は、部下の立場から上司の無能ぶりに対処するためのハウツー書である。

 “トンデモ上司”は五つのタイプに類型化されている。(1)モチベーションを下げまくる上司、(2)部下を信用しない上司、(3)部下を追いつめる上司、(4)自分の価値観を押しつける上司、(5)部下のジャマをする上司、である。この5タイプさらに細分化して、事例を挙げながら、どう対処すべきかをアドバイスする。

 例えば、(1)のタイプでは、「守ってくれない上司」が取り上げられている。著者が営業マンだった頃、仕事上のミスで会社に損害を与えてしまったときの事例だ。役員室に呼び出されたとき、「しょうがないな、オレも一緒に行ってやるよ」と上司が言ってくれた。ところが、その上司は部屋に入るなり、役員の側の席に座って、叱責する役員と一緒に自分をなじった──。

 よくもこれほどというくらい豊富なケースが挙げられており、「これって、あるある」とうなずく読者は多いことだろう。部下の立場で書かれている本だが、上司が自らのマネジメントを再考するという読み方もできる。

 ただし、タイトルと中味には乖離がある。「人は上司になればなぜバカになるか」についてのプロセスや心理的な考察を期待する読者は、肩すかしを食いそうだ。(止水)


『人は上司になるとバカになる』
菊原智明著 光文社刊(740円+税)
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