旅の蜃気楼
博多の駅で日本のよさを再発見
2011/09/22 15:38
週刊BCN 2011年09月19日vol.1399掲載
▼中国に足しげく通うようになって1年半が過ぎた。最初は中国に出かけることに感動した。一人で地下鉄に乗れたことの喜び、路線バスに乗った経験。高速鉄道で隣合わせた中国人と会話ができた喜び。街の食堂に入れる喜び。食堂の賑やかさ、天安門の広さ、上海・外灘の混雑ぶり、家電量販店の活気……。だが、新鮮な驚きを通り越すと、見えるものが変化してくる。
▼例えば、家電量販店で見かけない日本ブランドの商品。活気はあるけれど、がさつな人たち。北京のタクシーが韓国のヒュンダイ製ばかりであること。街中に意外と思うほど多いドイツ人たち。国内の航空網が充実していること。高速鉄道の敷設が進展していること。街づくりが堂々として、並木のつくり方がうまいこと。さらには、サムスンの看板が目立つこと。サムスンのカメラをぶら下げた人がいること。スマホの利用者が急激に増えていること。
▼中国へ行くつど、日本とは異なるシーンを目にすることが多い。そのたびに、日本ブランドの影がとても薄いことに気づいて、心を曇らせていた。しかし、杞憂にすぎなかったようだ。博多駅のプラットホームに九州新幹線の車両が入ってきた。堂々としていて頼もしい。乗務に備えてホームで待ち受ける女性の車掌の姿は実に清々しい。日本のよさをしみじみ感じるようになってきた。このよさはもっともっと伸びるはずだ。(BCN社長・奥田喜久男)
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