BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『クラウドが変える世界』

2011/09/22 15:27

週刊BCN 2011年09月19日vol.1399掲載

 NTT副社長というクラウドの担い手の中心にいる人物が著した「クラウドの教科書」。クラウドを「ひとつの技術やシステムによって成り立っているものではなく、さまざまな技術が融合してできた状態、あるいは環境」としたうえで、クラウド化がもたらす企業経営や社会システム、個人のライフスタイルの「新たな価値」を描く。

 では、具体的にもたらすものは何か。著者はクラウドの果たす役割を課題解決(ニーズ)と価値創造(シーズ)に分け、それぞれ現時点での利活用事例を紹介している。

 まずは課題解決型。情報通信の世界でのダイナミックな変革の波として、「パラダイムシフト」「サービス融合」「グローバル化」の三つを挙げ、これらに対応するために、コストを下げ、ムダを省き、スピードを上げて成長したいという企業あるいは社会システムのニーズを、クラウドがどのように解決していくのかをみる。事例として登場するのは、グローバル展開や柔軟性のあるサプライチェーンマネジメント、機会損失の最小化、事業の継続、医療・学校現場での利活用、電子自治体などだ。

 価値創造型は、ビッグデータのマーケティングでの活用や、エンタテインメントとコミュニケーションの革新・進化、そして震災からの復興を挙げている。

 さらに、これらの現状を俯瞰しながら著者が描くクラウド活用の姿が、「課題解決先進国・日本」。持続可能で豊かな社会の実現に向けて、課題解決で世界の範となれ、と結んでいる。(叢虎)


<BOOK REVIEW>『クラウドが変える世界 企業経営と社会システムの新潮流」
宇治則孝著 日本経済新聞出版社刊(1600円+税)
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