旅の蜃気楼

パンダの仕草に癒やされて

2011/09/15 15:38

週刊BCN 2011年09月12日vol.1398掲載

【成都発】成都といえば、有名なものが二つある。まず思い浮かぶのは『三国志』の蜀の国。劉備玄徳と諸葛孔明の武勇伝だ。彼らを祀ってある武侯祠には一度は行ってみたいと思って訪ねた。もう一つは、山間を利用したパンダの公園だ。あちらでもこちらでも「熊猫很可愛!」の連発だ。ガラス張りの檻の中にはベビーベッドがあって、5頭の赤ちゃんパンダが並んで寝ている。すやすや、という寝息が聞こえるくらいによく寝ている。上向いたり、横向いたり、隣に重なったり、1頭が動くと手や足が隣を小突く。小突かれて少し動く。その可愛らしさといったら、もう、という感じだ。

▼成都の人口は1100万。だが、日本人は少ない。登録している人で250人ほど。ここで活躍する親日家の中国人に会った。グローバルエージェントの社長・全驥さん。小学生の頃に来日して神戸大学経済学部に学び、2007年10月、在学中に起業した人物だ。iPhoneアプリのソフト開発を主な事業としている。本社は大阪だが、生まれ故郷の成都に開発部門を設けて、現在、日本向けスマホ対応のソフトを開発している。会社は日増しに大きくなっており、日本人の仲間を呼び寄せて、ユニークなゲームソフトを制作中だ。全さんは言う。「成都の若者たちは優秀だが、所得水準は日本に比べて非常に低い」。アイデア出しは日本人、開発は中国人だ。

▼日本人の中核は橋本恒平さんだ。彼はウェブアクションというソフト会社の社長で、全さんとは学生時代からの仲間。誘われるままに、昨年末に成都に来た。成都の居心地の良さと、人材の豊富な開発環境が気に入って、今では日本人の仲間を呼び寄せている。住居の賃料は月4万円で80m2のプール付き。成都は、北京の10年後を追って発展している街だ。進出するなら、早いほうが有利だろう。(BCN社長・奥田喜久男)

神戸大学在学中に起業し、成都に開発部門を設けた全驥さん
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