BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>孫正義 平成の龍馬伝説

2011/09/08 15:27

週刊BCN 2011年09月05日vol.1397掲載

 毀誉褒貶の激しい人物ではあるが、現代の傑物であることは間違いない。そう、孫正義だ。在日韓国人であることに誇りをもつという彼は、坂本龍馬に心酔する“大の日本びいき”でもある。だからこそ、大震災の直後、100億円という途方もない額の義援金提供を申し出たのだ。

 この本は、孫と深く関わった人たちの証言を積み重ねて本人の像を浮き彫りにしていく手法をとったところに、斬新性が感じられる。

 まずは、野田一夫(日本総合研究所会長・多摩大学名誉教授)である。若手のベンチャー起業家にとって“カリスマ”ともなっている野田との最初の出会いで、孫は「君には見所がある」という言葉をかけられた。野田自身は、そのことをよく記憶していないというが、孫は今現在も鮮明に覚えているそうだ。

 シャープの副社長を務めた佐々木正、95歳。工学博士であり、電卓や液晶などの分野の世界的な権威だ。孫は「音声付き翻訳機」の試作機を作って当時の松下電器などに持ち込み、門前払いを食って大きなショックを受けた。そんなときに以前から面識のあった佐々木に会い、日の目を見ることができた。その後も、孫に対しては公私ともに援助を惜しまなかった。この人との出会いがなかったら、今のソフトバンクはこの世に存在しなかったというほどの大恩を受けている。

 著者は孫正義と同じ在日韓国人ということもあってか、孫への入れ込みが少し鼻につくが、恩人たちの人物評がそれを和らげている。(止水)


『孫正義 平成の龍馬伝説』
津久居樹里 著 現文メディア刊 (1500円+税)
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