BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス』

2011/08/25 15:27

週刊BCN 2011年08月22日vol.1395掲載

 行動経済学とは、「人々の心の働きや心理状態をもとに、人間の経済行動や金融市場の動き、さらには投資手法などを考える理論」である。一般の経済学が「人間は合理的な判断にもとづいて決定を下す」ということを前提にしているのに対して、行動経済学は「人間はときには間違いもするし、合理的とはいえない意志決定をする」ということを前提に、人間の経済行動や市場を考える。実際に、人間はあやまちを犯すだけでなく、説明できないことや馬鹿なこともするわけで、その意味でより現実に近い学問だといえるだろう。いわゆる「バブル」は、行動経済学でないと説明できない現象らしい。

 本書は、比較的新しい行動経済学という学問を、専門用語をちりばめながら、しかし事例を交えてそれらを平易に説いていく入門書だ。例えば、セキュリティソフトなどでよく耳にする「ヒューリスティック」も、著者にかかれば「ひらめき・直感・大づかみな印象」という言葉に置き代わり、その役割は「情報の整理」になる。われわれは限られた時間のなかで判断を下すとき、ものごとのエッセンスをつかむこのヒューリスティックを使っている。

 数多く提示される行動パターンを、自分ならこうする、こう思う──と考えながら読み進むと楽しい。それらが学問的にマジョリティに属すると、安心しながらもちょっと悔しくなるのだが、この心理もまた行動経済学では予測されている事象であり、さらに悔しくなるという何やら愉快なジレンマに陥る。(叢虎)


『最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス』
真壁昭夫 著 朝日新聞出版刊(700円+税)
  • 1