旅の蜃気楼
北京の一角に残る“昔の中国”
2011/07/21 15:38
週刊BCN 2011年07月18日vol.1391掲載
▼そう思いながら、窓の外を見つめる。立派なビルが立ち並んでいる。聞けば、これらのビルは世界で有名な建築家の作品が多いらしい。夜ともなると、ビル群はネオンサインで別の姿を見せる。だが、昼であっても十分、眺めるに耐える立派な建物だ。電信柱がないから、電線の雲の巣状態がない。これは視界が開けて美しい。いかにも現代を思わせる市街の様子だ。
▼北京の街並には風格が備わっている。BMW、ベンツがスイスイ走って、タクシーを追い抜いていく。7月7日の北京は夜来の大雨が塵埃を払ったのか、真っ青だ。道幅が広いから空が大きく広がっている。北京の街は誰かが設計図を描いて、それに基づいてつくり込まれているはずだ。そのつどの積み上げではここまでの街並はできないと思う。実に立派な街だ。
▼万里の長城や故宮をつくった中国人は、巨大な建造物に挑んできた。街づくりも同じだ。感心しながら、とある立派なビルに入った。ところが、よく見ると壁の造りが大雑把だ。天井のスレートが整然としていない。改善すべき箇所は多い。エレベータで上の階に向かった。窓から下の景色を見た。トタン屋根の雑然とした住居が一角に残っていた。「これだよ、中国のイメージは」。なぜか、ホッとした。(BCN社長・奥田喜久男)
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