BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『ダントツ経営 コマツが目指す「日本国籍グローバル企業」』
2011/05/26 15:27
週刊BCN 2011年05月23日vol.1383掲載
この本の“読みどころ”は中国でのビジネス展開にある。コマツが本格的に中国へ進出しようとした1995年当時は、販売網も一から自前で構築しなければならなかった。
特筆すべきは、「資金力はなくても、意欲と能力のある現地の人たちに代理店を任せてみよう」と決断したことだ。現地に密着した人が代理店を経営することで、その土地ごとの情報が集まってくる。「次に、ここでダムの建設が始まる」という情報をつかめば、建設機械の需要を先取りすることができるのだ。
もう一点は、ITを活用した「市場の見える化」である。コマツの建設機械には、「コムトラックス」というシステムが標準装備されている。GPS機能をはじめ、エンジンコントローラーなどから集めた情報を通信機能を使ってコマツのデータセンターに送る仕組みである。これで、どんなことが起きるのか。建設機械がどの地域で稼働しているか(いないか)をつかめば、機械の生産調整に生かすことができる。また、「仕事がないので、代金返済を待ってほしい」というユーザーがいたら、コムトラックスの稼働情報をみれば本当かどうかがすぐわかるし、誠意のないユーザーの場合は、通信機能を通じてエンジンがかからないようにしてしまうこともできる。中国の市場で生まれた画期的なシステムを、コマツは世界に展開しようとしている。(止水)
『ダントツ経営 コマツが目指す「日本国籍グローバル企業」』
坂根正弘著 日本経済新聞出版社刊(1700円+税)
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