旅の蜃気楼

創業社長の引退を目の当たりにして

2011/05/05 15:38

週刊BCN 2011年05月02日vol.1381掲載

【新宿発】エムオーテックスの会長・高木哲男さんが誕生した。高木さん本人からは、会うたびに、真顔で自分に言い聞かせるように、「60歳で引退しますよ」と聞かされてきた。創業社長によくありがちな、引退願望のトークではないかと、そう思って聞いていた。今年は創業20周年で、ご当人も会社も節目ではある。社長を辞めるに当たっては、引退への深い覚悟があったという。そこで公約通り代表取締役会長になり、「これでやっと解放された。遊べる」という気分なのだろう。

▼「エムオーテックス20周年感謝会」の案内状は、数週間前に手元に届いた。式次第には新社長の就任発表とある。高木社長の引退あるいは会長就任という式次第はない。何ともシャイな人だと思った。普段の本人の行動と話ぶりに触れていると、シャイとは真逆にいる人のように思えてならない。だが、実のところ、内面はシャイということなのだ。

▼新社長は高橋慎介さん。日本IBM、マイクロソフトを経て、高橋さんとしては初めての社長就任だ。挨拶は実に軽妙で、聴衆の気をそらさない話術はIBMっぽかった。生真面目一本槍のエムオーテックスにこの雰囲気が同化すると、ずいぶん大人びてくることだろう。高木さんはジャズに造詣が深い。同社に洗練されたジャズの味が出ることを期待したい。

▼エムオーテックスはソフト企業受難の時代にあって、社業は順調に伸びている。すぐれた点は、商品のコンセプトが一貫していること、先んじて新たな新商品を発売すること、顧客サポートに徹していることだ。今でも高い利益率を維持しているが、事業のコンセプトばかりは高木さん以外に頼る人がいない。「遊びも半年が限界だろう」と周囲はみているようだ。(BCN社長・奥田喜久男)

新社長の高橋慎介さん(左)と、肩の荷を少し降ろした(?)高木哲男さん
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