旅の蜃気楼
東京マラソンが映した感動のドラマ
2011/03/10 15:38
週刊BCN 2011年03月07日vol.1373掲載
▼ひと工夫を凝らしたコスチュームや、笑えるパフォーマンスのランナーたちの様子を見て、沿道で声援を送る人々もエンジョイしている。とはいえ、残り8kmの地点だから、顔を歪めながら走るランナーも多かった。でも、必死の形相で走る人たちにエールを送りたくなる。彼らは何故そんなに“必死”になって走るのか。それぞれに思いはあるのだろう。
▼川内さんは小学生の時から走り始めて駅伝を夢見た。高校生の時に怪我をして駅伝のエリート校には入れなかった。それでも走って、学習院大学の学生選抜で箱根を走った。社会人は実業団チームではなく、普通の道を選び、夢に向かって自らの生き方を貫き通した。そして勝った。市民ランナーであってもトップランナーになれる。言葉を変えるなら、エリートランナーを見返す意思だ。
▼転げるようにしてテープを切った姿と、エリートランナーがゴールして受けた余裕のインタビュー姿があまりにも対象的だったので、この差は何かと考えさせられた。必死さだけで、実力の限界を超えることはできるのだろうか。答えは、「時として超えることができる」。ただし、川内選手の実力が、エリートランナーたちと同じレベルでなければ、110%の力を出し切っても勝利者にはなれない。川内選手の生き様と、こうしたドラマを生む市民マラソンにエールを送りたい。(BCN社長・奥田喜久男)
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