BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『「事務ミス」をナメるな!』

2011/03/10 15:27

週刊BCN 2011年03月07日vol.1373掲載

 いきなり例題を一つ。

「みれだや あまやりを じうどてきに とのりぞける」

 あなたは、この文章を瞬時に読みこなしたのではないだろうか。「乱れや誤りを自動的に取り除ける」と。人間の脳は、こうした乱れた情報や誤った情報を無意識のうちに修正してしまう。この能力が働きすぎると、「細かい異常には気づけない」という副作用をもたらすことになる。多くの人がオレオレ詐欺に引っかかるのは、この副作用のせいだと著者は指摘する。

 「ヒューマンエラーの研究者」の看板を掲げる著者にはさまざまな企業から相談が寄せられるが、このところ、金融、病院、放送、広告代理店など、いわゆる文系の会社からの依頼が目立つようになってきたそうだ。事務ミスが命取りになることを自覚する企業が増えてきたのだろう。

 本書の前半は、「人はなぜミスをし続けるのか」について、心理学、哲学など多面的な角度から分析している。

 ミソは後半の「実践篇 ミスはこう防ぐ」にある。ミスを根絶することはできないが、力を磨くことによって少なくすることはできる。その力とは、「異常検知力」「異常源逆探知力」「作業確実実行力」の三つだという。とくに重要なのは異常検知力。「お毒見役」の役割を果たす人材がいれば、ミスを未然に防ぐことができるし、もしまずいことが起きてもトラブルを最小限にとどめることができる。

 どんな仕事に就く人にも一読を勧めたい本だ。(止水)


『「事務ミス」をナメるな!』
中田 亨 著 光文社刊 (740円+税)
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