▼台北の地下鉄で、現地の若者から席を譲ってもらった。感謝の意を表して、ありがたく座った。そういえば、年明けに2年ぶりに来日した韓国の友人から聞いた話を思い出した。「日本の若者たちはどうしてしまったのか。電車の優先席で誰も席を譲ろうとしないですね。韓国の子どもたちはまだ譲りますよ」。古稀を迎えた友人は、40年前に東京大学に留学していた当時からの日本をみているだけに、残念がっているのだ。

▼台北駅に新幹線の切符を買いに立ち寄った。駅舎は大きくて立派な建物だが、場所によってはかなり照明が暗い。そのあたりで高校生と思われる若者たちがギターの練習をしたり、ストリートダンスの振り付けをお互いに教えあっている。

▼最初はドキっとした。数十名の若い男女が暗がりの中で動いていたからだ。だが、通行人は不快感を抱く様子もなく普通に歩いている。警官が二人連れでやって来た。彼らも話しながら子どもたちの前を歩き去った。翌日、同じ場所を通ったら、子どもたちは同じように楽しそうに仲間たちとコミュニケーションしていた。街中の人々がゆったりしている、と感じた。居心地がよかった。（直）