BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」』

2011/01/20 15:27

週刊BCN 2011年01月17日vol.1366掲載

 かつて世界を席巻した日本製製品、すなわち「メイド・イン・ジャパン」。この言葉に代わって「メイド・バイ・ジャパン」があからさまに語られるようになったのは、21世紀に入ってからだった。経団連が「日本企業によってつくられた製品であれば、生産地は労働力の安価な海外でかまわない」という文脈で使ったように記憶している。

 しかし、本書の「バイ・ジャパン」は、これとはまったく異なる視点からのもの。生産地云々ではなく、現代日本文化を背景に、日本人によってつくられたものやムーブメントを指している。著者が世界に向けて発信するに足るものとして例示するのは、いまクール・ジャパンとしてもてはやされているサブカルチャーの数々だ。それはアニメなどのコンテンツだったり、そこから派生する痛車(申し訳ありませんが、わからない方はググってください)やフィギュアというプロダクトだったり、あるいは「ツンデレ」という一種社会的な現象だったり、はたまたインダストリアルデザインだったりする。

 個々の例示について、書評子は必ずしも著者の論調には与しない。製品や事象の本質ではなく、付加価値にしか過ぎない部分をことさら大きく見せるのは、羊頭狗肉の誹りを免れないだろう。しかし、それでも挙げられた事象はまぎれもなく日本発のもの。これまで日本のサブカルチャーに興味のなかった方にこそ、手にしてほしい一冊だ。“日本発”の可能性を知ることができる。キーワードは「日本らしさ」だ。(叢虎)


『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」』
川口盛之助 著 ソフトバンククリエイティブ刊(730円+税)
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