BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『2010年 中国経済攻略のカギ』

2010/12/16 15:27

週刊BCN 2010年12月13日vol.1362掲載

 ビジネス雑誌『Voice』の中国関連特集に掲載された論客(エコノミスト、大学教授など)8氏の論考を抜粋・加筆し、再編集したもの。

 中国の経済成長ぶりは、世界の注目の的だ。“世界の工場”が世界最大の消費地になった今、「中国でビジネスを展開したいけれど、難しいという話も聞いている」という人のための〝入門の入門編〟にぴったりの本である。

 本書は、楽観・悲観の両面から中国経済の未来を読み解き、その市場をいかに攻略するかのヒントを提供しようとしている。

 BRICs経済研究所の門倉貴史氏は、土地が国家所有であるために、景気対策として政府が公共投資を行う際に用地取得を迅速に実行できることをメリットの一つとして挙げている。さらに、農村部の人たちが自動車や家電製品を購入する場合に補助金を支給する制度(「汽車下郷」「家電下郷」)が奏功し、内需を拡大させたことなどを引き合いに出しながら、「上海万博が中国経済を爆発的に発展させる」と結論づける。

 一方、みずほ証券の上野泰也氏は、中国経済を「サイボーグ経済」とみなし、「人工的に造られた身体は、バランスを欠いてしまう」と懸念する。一人っ子政策が生み出す人口構成のひずみも大きな弱点になるとみる。

 実は、これらの論考は2009年時点のものである(本の発行は2010年1月)。ほぼ1年前の各氏の見解と中国の現状とを引き比べてみるという、多少意地悪な読み方をしてみるのも一興だろう。(止水)


『2010年 中国経済攻略のカギ』
PHP研究所『Voice』編集部 編 PHP研究所刊(438円+税)
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