BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『12億の常識が世界を変える インド』

2010/12/09 15:27

週刊BCN 2010年12月06日vol.1361掲載

 「中国の次はインドだ」などというと、インドの方々には「次ではなく今だ」と叱られるかもしれない。タイトルにあるように、人口12億のうち約52%が25歳以下という強大なポテンシャル。近年爆発的に増大しつつある中間所得層による市場としての存在感。そして、華僑が中国のパワーを世界に知らしめてきたように、現在IT産業を中心に世界で活躍する2500万人の“印僑”たち。インドはBRICs諸国のなかでも、中国とは別の道を歩みながら、非常に速い速度で成長しつつある国なのだ。長谷川慶太鮱も太鼓判を押している。

 著者はインドを「非常に信頼できる国」という。「世界最大の民主主義」が行われ、国民は勤勉で知的水準も高い。旧宗主国イギリスの伝統を引き継いで、物事の決定に時間はかかるかもしれないが、朝令暮改はない。

 しかし、一方ではカースト制度や絶対貧困層の存在や、他国ではあまりみられない独特の慣習と常識、多言語・多民族国家ならではのとっつきにくさをもっている。それを踏まえたうえで、著者は「インドに出て行こう」とハッパをかける。

 日本がインドにどのような影響を与えるか、そしてインドで何をなし得るかについて、本書の言及はそれほど多くはない。しかし大言壮語するよりも、著者は一度現地に行って、自分の目で確かめてくることを読者に勧めている。現在のインドの社会・経済を概観し、行動のきっかけとするのに好適の書だ。(叢虎)


『12億の常識が世界を変える インド』
長谷川慶太郎 著 ポプラ社刊(1500円+税)
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