旅の蜃気楼
“土俵”を拡げて中国に向かう
2010/12/02 15:38
週刊BCN 2010年11月29日vol.1360掲載
▼書棚には中国関連の資料が増えた。年末も近いので、資料を整理し始めたら、中国訪問の最初の記録が出てきた。場所は天津科学会館である。1985年9月15日の9時30分、私は中国のソフトウェア技術者たちに「日本におけるパソコンのハードとソフトの現況」というテーマで話をした。中国側の関係者は日曜日にもかかわらず、四十数名が出席し、熱心に聞いていた。講演が終わり、質問を受けた。質問内容は「日本の著作権、ソフトウェアに関する税法、ソフトウェアの見積り、ソフトウェアの営業の成立基盤」。なかでも、ソフトウェアの見積りについては、日本の技術者料金の見積り金額が高額である点について、興味が尽きないといった思いを感じさせた。やはり、技術者として自分の技術がどれくらいに評価されるのかという点が、関心の的になったものと思われる。
▼この視察団の正式名は「中国コンピュータソフトウェア諸事情」。主催は日本パソコンソフトウェア協会(現CSAJ)。主な参加者は、光栄(現コーエー)創業者の襟川陽一夫妻。同社は視察した4年後の1989年8月、天津に開発子会社を設立し、ゲームソフト『三国志』の開発を開始した。スタット・サービス(現ソラン)の千年正樹社長。その後、中国に開発拠点を設け、現在はITホールディングスの傘下で成長の道筋をつけた。両社とも中国とは20年の関わりをもち、中国に根を張った。47都道府県のソフトベンダーは、いつ中国に一歩踏み出すのか。来年の大きな決断事項である。(BCN社長・奥田喜久男)
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