BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ハイタッチ』

2010/12/02 15:27

週刊BCN 2010年11月29日vol.1360掲載

 IT界の著名な人物が上梓した本。カバーに「日本オラクル、アップルジャパンを率いてきた著者が初めて語る、27歳までに身につけておきたい本当に大切なビジネス基礎力」と表記されているように、若者を対象として書かれている。この本でいうところの「成功する人」とは、ユニクロの柳井社長やソフトバンクの孫社長といったカリスマ経営者ではない。会社のなかで新しいビジネスを開拓したり、プロジェクトを成功に導くというようなタイプが想定されている。

 外資系ITベンダーの経営者としての20年間におよそ3000人もの新卒・中途採用の面接を行ってきた著者は、成功しそうな人とそうでない人を見分ける嗅覚を身につけたという。「短い面接時間だからこそ余計に、体から発信されるエネルギーや『気』みたいなものを経営者は鋭く感じ取ろうとしている」。本書の第一章では、面接官の立場からみる“人物鑑定法”が生々しく描かれている。

 第二章以降は、日本の会社で働くことの意義とか、ビジネス社会で頭角を現すには、どんな資質や行動が必要とされるかといったことが記されている。外資系企業によくみられる「転職」については、自らの体験や部下の事例を引き合いに出しながら、心得とタブーに触れている。「同業他社に転職する時は倫理を守ること」、つまり、お世話になった勤務先に、後足で砂をかけるようなことをしてはならないと戒める。

 “上から目線”ではない語り口は、読者の共感を呼ぶだろう。(止水)


『ハイタッチ 成功する人の働き方のルール』
山元賢治 著 日本経済新聞社刊(1400円+税)
  • 1