BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『孫正義のデジタル教育が日本を救う』
2010/11/25 15:27
週刊BCN 2010年11月22日vol.1359掲載
孫氏にはかつて、四つの夢があった。事業家、貧乏画家、政治家、そして小学校の先生になることだった。とくに、先生になることには真剣だった。だが、韓国籍であることがその道を阻んだ。
そんな過去があるだけに、「教育」に人一倍強い関心を抱く孫氏は、デジタル教育の構想を打ち立てた。韓国では2007年に全域の小学校で電子教科書の実証実験が開始され、2011年から電子教科書が義務化される。デジタル端末の開発に加えて、教科書の電子化、教師のリテラシー、保護者への理解促進などが同時に行われていたという。
教育のデジタル化は、日本が遅れているわけではない。しかし、「光の道」構想の旗振りをしていた原口一博総務大臣が片山善博氏に交代したことで、後退するのではないかとの懸念がある。そうした状況にあって、孫氏は、韓国が4年でデジタル教育を実現するなら、日本はせめて5年でやらねばと強気な姿勢をみせている。
著者は、田原総一郎氏が最近上梓した「緊急提言! デジタル教育は日本を滅ぼす」を取り上げて、デジタル教育を立体的に捉えようと試みている。田原氏の主張は、デジタル教育の全否定ではなく、「デジタルによる(誰とも関わりをもたない)“自己完結”がいけないのだ」との捉え方である。
“孫正義賛歌”のトーンが少し鼻につくが、ぜひ読んでおきたい本である。(止水)
『孫正義のデジタル教育が日本を救う』
中村東吾 著 角川 SSコミュニケーションズ刊(780円+税)
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