旅の蜃気楼
トイレにみる都市間格差の一考察
2010/11/11 15:38
週刊BCN 2010年11月08日vol.1357掲載
▼この10月、10日間をかけて中国を歩いた。北京、長沙、成都、合肥、南京、常州、上海。一気に歩いたので、街の発展状況がよく分かった。発展段階は広い道路、立派な公共施設、高層ビル、対比する古い町並みを見れば分かる。ホテルに宿泊すると、街の歴史そのものを感じる。その一例として、合肥を紹介しよう。この街には現在、“リトル東京”建設の構想が進んでいる。新しい開発区の広大な更地が候補地だ。街のいたる所でビルを建てている。合肥は発展前夜の街だ。それにしてはお洒落な古いホテルがある。フランス系のソフィテルホテルだ。目の前にはフランス庭園がある。完成した当時、市民は目を瞠ったことだろう。だが、残念ながらこのホテルの旬は過ぎている。設備もサービスもだ。中国のトイレは山小屋と同じように、使用済みの紙は脇のゴミ箱に入れるのが常識だ。もちろんウォシュレットもない。
▼中国の都市比較をする旅の最終地に着いた。そこで驚きに出会った。上海花園飯店だ。ホテルオークラ経営の落ち着いた雰囲気だ。新しくはない。トイレに入った。便座の形状が違う。ウォシュレットだ。上海は山小屋方式ではない街だ。部屋の水も飲料水になっている。ここは日本だ。日本のサービスに誇りを感じた。中国と日本の格差はウォシュレットの心地よさだ。そう確信した。だが、贅沢はしていられない。次回はまた本物の山小屋に戻ろう。(BCN社長・奥田喜久男)
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