BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『チャイナクライシスへの警鐘 2012年 中国経済は減速する』
2010/10/28 15:27
週刊BCN 2010年10月25日vol.1355掲載
中国は2001年にWTOに加盟した。これが市場経済化のマイルストーンとなった。だが、共産党一党支配の下で行われた経済の自由化は、水と油を混ぜようとするようなものだというのである。
矛盾の最たるものは、市場経済を目指していながら、金融に関しては自由化されていないことと、非効率な国有企業を温存していることにあるとの指摘がなされている。国有銀行は国有企業にしか融資を行わない。その融資を受けた国有企業は、生産設備への投資をするのではなく、財テクに走っているとみられる。上海万博という一大イベントが終わった後、景気後退⇒株価下落⇒国有銀行の不良債権増大が懸念される。
タイミングの悪いことに、2012年には胡錦濤総書記、温家宝首相の交代を控えている。彼らは、政権末期にあって、自らの晩節を汚したくないと考えているので、大きな改革は期待できない。中国経済が破綻することはないにしても、ここ2・3年のうちに、一定の混乱に陥る可能性があると著者はみる。ただし、それは中国が成熟経済に転換していくうえで必要不可欠な通過儀礼のようなものと結論づけている。(止水)
『チャイナクライシスへの警鐘 2012年 中国経済は減速する』
柯 隆(KE LONG)著 日本実業出版社刊(1500円+税)
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