旅の蜃気楼
「上海万博」管見記
2010/10/14 15:38
週刊BCN 2010年10月11日vol.1353掲載
▼入場はしたものの、どの館も長蛇の列だ。待つ気はしないので、流れのよい国に入った。ブルガリア館を選んだ。館に入ると中はパネル展示があるだけ。なるほど、人の流れが速いはずだ。一瞬のうちに見て、館の外に出る。中国風味の匂いが漂ってくる。時計を見ると午後5時すぎ。もう、3時間は歩いている。お腹が空いたわけだ。パンとジュースを買って、売店に隣接するベンチに座った。パンの味は文化度のバロメータだと、勝手に思っている。さっそく、ひと口かじってみた。十分とまではいかないが、合格ラインはクリアしている。ただ、ウインナーは魚肉ソーセージっぽかったので、もう少し頑張って欲しい。
▼食べ終わる頃になると、人が増えてきた。近くから歌声が聞こえてきた。欧米人らしき人のギターの弾き語りだ。拍手はまばらだった。席を立とうとしたら中国語の歌が始まった。最近のヒット曲のようだ。意味はわからないが、愛を語っていると感じた。歌い終ったら、満場の拍手だ。言語というのはとても大切な意思疎通のツールだと思い知らされた。帰路につくと、家族連れが前を歩いている。弟はお母さんと手をつないで嬉しそうに歩いている。お兄ちゃんはやんちゃそうだ。吹き抜けにやってきた。お兄ちゃんが手に持っていた紙を吹き抜けの下に、放り投げた。ふわふわしながら、一階に落ちて行った。すると、お父さんが「ゴミを出してはダメ!」(おそらく)と、きつく言いながら子供の頭をひっぱたいた。そういえば会場を見渡すと、ゴミがない。中国の文化度は経済力と同様に伸びている。お兄ちゃんが父親になったら、きっとお父さんと同じことを子供に躾けるにちがいない。日本と変わらぬ光景を見た。人々の交流を止めてはならない。(BCN社長・奥田喜久男)
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