BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』

2010/10/07 15:27

週刊BCN 2010年10月04日vol.1352掲載

 人間は、人との“つながり”なしには生きられない、とはよくいわれることだ。本書は人間を結節点としたつながり、すなわち「社会的ネットワーク」が、どのようなところに、なぜ存在し、どのように機能するかをわかりやすく説く。

 最も単純な社会的ネットワークは、個人対個人の関係だ。この関係は家族、友人、同僚へと枝分かれし、それを繰り返しながら、広大な社会的ネットワークになっていく。人間個々から成るこのネットワークは、しかし個人の思惑とは関係なしに、あたかも一つの生命のように機能し、成長する。

 本書の帯には、「肥満も性感染症も笑いもすべて伝染する!?」との惹句が躍る。語られる社会的ネットワークのメカニズムは、感情や行動、健康、政治、金、進化、そして従前とは比較にならない広大なネットワークをわれわれにもたらしたインターネットなど、多岐なジャンルにわたる。

 最終章で著者たちは「人間は一人ひとり力を持っているが、一人ではできないことを達成するためにはともに行動する必要がある」と語りかける。集団のなかで他人に影響を受ければ、自分の個性の一部は失われるかもしれないが、しかしまた自分も他者に影響を与えているのだ。それを認識した時、われわれは人類としての目標達成に近づくという。

 各章は、すべて身近な事例から始まる。社会科学や自然科学の門外漢にもすらすらと読み進められる好著だ。翻訳もいい。少なくとも書評子は、この20年、先端研究の書として、これほどわかりやすい本には出会っていない。 (叢虎)


『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』
ニコラス・A・クリスタキス/ジェイムズ・H・ファウラー 著 講談社刊(3000円+税)
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