BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『AR三兄弟の企画書』

2010/09/30 15:27

週刊BCN 2010年09月27日vol.1351掲載

 「セカイカメラ」をご存じだろうか。iPhoneユーザーからは「もうとっくに使って楽しんでるよ」という答えが返ってきそうだが、スマートフォンの画面に映し出したカメラ画像(つまり目の前の現実)の上に、場所やモノに関連する「エアタグ」という付加情報を重ねて表示するアプリケーションだ。付加情報はユーザー間で共有できる。この「セカイカメラ」で使われている技術が、AR(Augmented Reality=拡張現実)であり、本書はクリエイター集団「AR三兄弟」が、拡張現実を拡張させていく話である。

 前半は、ARの技術と考え方を、主に広告や劇場を舞台に実践していく過程をなぞる。人との出会いからAR技術のマッシュアップ素材を発見し、例えばアニメーション映画『東のエデン』では、作中に登場するARシステムを模したグッズ・チラシのプロモーション展開や、携帯サイトとTwitterの連動システムを実現。これが今年3月の話である。

 後半は、ARとマスメディアとのマッシュアップ。さらには現在は視覚しか拡張していないAR技術が、人間の五感に広がる可能性を語る。著者は「大風呂敷」と表現するが、いやいや、絶対そう思ってはいないのが伝わってくる。 著者はいう。「AR技術をAR技術としてのみ使い続けることによって、技術と言葉が消耗し、やがて飽きられ、廃れてしまう」。技術も大切だが、淫しない。技術に「見立て」を施し、伝わるべき媒体に伝えること――その方法論でARは拡張していく。読むならいまの旬本だ。(叢虎)


『AR三兄弟の企画書』
川田十夢 著 日経BP社刊(1400円+税)
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