BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ヘコむな、この10年が面白い!』

2010/09/24 15:27

週刊BCN 2010年09月20日vol.1350掲載

 久々に出会った、マーカーペンを片手にして読みたくなる本である。随所にビジネスのヒントが散りばめられているので、この紙幅の少ない書評欄では書くのに苦労する。

 ソニーに入社して海外を飛び回り、ソニー・チャイナの会長職を務めた著者の主張は三つ。(1)日本は「モノづくり」国家から脱却すること、(2)「事業化」を通した「コト興し」の国に変わること、(3)「環境ビジネス」の分野で世界をリードする国になること――。

 「モノづくりニッポン」の代名詞ともいえるソニーに籍を置いた人物が、「モノづくり」にすがるなというのには、理由がある。21世紀、産業のグローバル化が進み、中国が世界の生産拠点となった段階で、日本が得意としてきた垂直統合型製造モデル(系列企業でグループを形成し、そのなかで製造を完結する形)が崩壊し、代わって頭角を現したのが水平分業型モデルである。パソコンや家電製品がその代表格だ。デバイス製造とセットは大量生産型の専門企業に任せ、ブランドホルダーが自社ブランドで製品を市場に投入する。このやり方だと、品質的にさほど見劣りしない製品を、垂直統合型企業がとても太刀打ちできないほどの廉価でつくることができる。

 では、これから日本はどうすべきなのか。「モノをどうつくるか」から「どうつくらせるか」に転換し、さらに、つくらせたものをどう売るかがカギを握る。それがすなわち「コト興し(=事業化)」であるというのだ。(止水)


『ヘコむな、この10年が面白い! モノづくり」から「コト興し」時代へ11』小寺 圭 著 風雲舎刊(1429円+税)
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