旅の蜃気楼
「誰もやらないのなら…」に感動した
2010/09/09 15:38
週刊BCN 2010年09月06日vol.1348掲載
▼ある時、田中さんと居酒屋でばったり出くわしたことがある。以前、このコラムでも紹介したが、その時に書かなかった話がある。その話とは――。お互いが気づかずに居酒屋の隣同士に座ったものだから、会話が筒抜けだった。「あのね、今日会ったお客さんがさ、インストロールって言うのよ。インストールのことだとわかるんだけど、そのお客さん、自信をもって何度も言うからさ、違ってるって言えなくてね」「いやあ、そんな経験は僕にもあるよ。ユビキタスをユビタキスって言ってしまうんだ」。田中さんとその連れの方とで交わされた、ネットの専門的な話題の合間でのたわいもない会話だった。若いなあと感じさせる話し振りだったから、父親のような気分になって、可愛いな、と思った。その当人が、週刊BCNで「誰もやらないのなら…」と発言するものだから、感動した次第だ。
▼同じ号の17面に『行きつけの店』欄がある。登場したのは、日暮里のそば屋『川むら』だ。春であれば、谷中墓地の最も北に位置した桜並木を愛でながら、ガラリと格子戸を引いて入る店だ。紹介者はネオアクシス副社長の河崎一範さん。この店は、酒好き蕎麦好きにとっては、人に教えたくない店の一つだ。銘酒“三方良し”がある。女将の立ち振る舞いが、酒と似て、切れが良くていい。「誰もやらないのなら、うちがやる」。そんな女将だ(BCN社長・奥田喜久男)
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