旅の蜃気楼

アップルからの“脱獄”未だ果たせず

2010/09/02 15:38

週刊BCN 2010年08月30日vol.1347掲載

【神田発】製品の機能はどんどん進化する。人の意(おもい)が実を結んで完成した結晶のように進化している。iPod→iPhone→iPad。アップル製品は今まさに光り輝いている。パソコンの黎明期、70年代からアップルは革新的なスターであった。「美しい。使いやすい。でも個性的な縛りがある」。そう表現できるメーカーだと思う。

▼京都大学の末松千尋教授に会った。その時、私の携帯がポケットの中で震えた。iPhoneを取り出すと、先生が「それ、いいですよね。“脱獄”しましたか」とひと言。今回が初対面だ。「いまだ囚人です」と応えた。脱獄するとそこは実に快適で、iPadでの脱獄はこれからだそうだ。先生曰く。「一つ商品が出ると、次にはそれを上回るものが出る。これを繰り返すエネルギーは素晴らしいですね」。この“脱獄”とは、アップルの縛りからの脱獄のことである。脱獄といえば、映画『大脱走』のスティーブマックイーンを思い浮かべる。かっこよかった。どうもアップルからの脱獄もそれに似ているようだ。末松先生が得意げに、私に脱獄したかどうかを尋ねられた時の表情が、少年っぽかったからだ。アップルの美しさと、縛りが、それを手に入れて乗り越えてやろうという気にさせるからかもしれない。

▼いくつものiPodをもっている。初代のiPodから何種類も手に入れてきた。そのつど、いい気分に浸った。白くて長いイヤホンにすら、ステータスを感じた。首からぶら下げて、長くて白いコードを揺らせながら、ジョギングするかっこいい女性を見たことがある。iPhoneは常に携帯している。手にした時の感じと、ポケットへの収納性が優れている。それに美しい。主にメールとメモを使っている。ベッドで横になりながら使うことが多い。だが、画面がそのつどクルクル回る。これには困っていた。すると、iPadでは回転停止機能が備わった。ありがたい。画面も大きいから、横になりながら原稿が書ける。これは便利だ。そのまま送信もできるので、もう手放せない。ただし、心配事もある。座った時と、横になった時との思考回路に違いはないのだろうか。(BCN社長・奥田喜久男)

アップル製品は、美しく、使いやすい。だが、個性的な縛りがある
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