BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『拝金』
2010/08/05 15:27
週刊BCN 2010年08月02日vol.1344掲載
果たして、これが小説といえるかどうか。それはともかく、著者自身の身の回りに起こった出来事をそのまま題材にしているので、事の経緯の生々しさは伝わってくる。
「あらゆる欲望、金、女、酒、美食、何でもいいけど、徹底的に浸り切り、欲にまみれればまみれるほど、ある瞬間、その欲の世界を突き抜ける、そんな感覚になっていく。(略)あれ、すげえんだぜ。それをなんとか、みんなに知ってほしかった」(後書きより)という思いから、この小説を書いたというのだ。「表立っては話せない、とっておきのネタもたくさんちりばめておいた」とも記されており、ライブドア事件をマスコミを通じてしか知らない人には、真相(かどうかは小説なのでわからないが)を知ることができるという触れ込みである。
主人公は年収200万円のフリーター、藤田優作。謎のオッサンの指南を受けて急速に成りあがっていく過程と、奈落の底に落ちていく瞬間は、現実のライブドア事件を想起させてくれる。球団買収騒動に続き、テレビ局の株買い占めで世論を沸かせたあの事件の裏には、関係者のこんな思惑が絡み合っていたのかと読者に思わせる仕掛けとして、小説形式が効果を発揮している。
だが、「拝金主義」ではない多くの人にとっては、読後感はけっして爽やかとはいえないような気がする。(止水)
『拝金』
堀江貴文著 徳間書店刊(1400円+税)
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