営業のハウツー本は、数え切れないほど多い。そのなかでこの本を選んだのは、「セミナーで集客し、きちんとセールスプロセスを踏めば、営業力は飛躍的にアップする」とのキャッチフレーズに新鮮さを感じたからである。

　大切なのは「売り込み」よりも「情報提供」である、というのは、営業の世界に身を置く人なら誰でも理解していることだろう。だが、問題は「誰に対して情報提供を行うのか」である。そこで、「集客」というプロセスが重要な要素として浮かび上がってくる。集客のための有効な手段が「セミナー」というわけだ。商談で肝となるのは、いかにキーパーソンにアプローチするかだが、著者の営業経験に基づけば、「セミナー営業では、このキーパーソンを獲得できる可能性がとても高くなる」という特色がある。例えば、顧客に「お客様を10人紹介してください」などと頼めば、たいていイヤな顔をされるが、「今度、セミナーを開くので、できるだけ多くのお知り合いの方にお知らせください」なら、案外、引き受けてもらいやすい。

　肝心なのは、集客できるセミナーを実施すること。当然ながら、そのことについても触れられている。タイアップセミナーも有効策の一つだが、「集客できる相手かどうか見極めること」「同業者とは組まない」といった留意点が述べられている。

　かつてソニー生命で成績優秀営業マンとして活躍した著者のノウハウが、ぎっしり詰まった本である。（止水）


『「売れる営業」の基本』
花田 敬著　アニモ出版刊（1500円＋税）