旅の蜃気楼

久住のミヤマキリシマに会う

2010/07/08 15:38

週刊BCN 2010年07月05日vol.1340掲載

【神田発】梅雨時の山歩きは、身体中から汗が吹き出してくる。蒸し暑くてたまらない。もう少し、もう少しと自分に言い聞かせながら一歩を踏み出す。その先に長い登りがあると、どうにもつらくて、一本(山でいう休憩のこと)をとりたくなる。思わず「いっぽーん」と仲間に合図する。休憩は50分歩いて5分。水を飲んで、ドライマンゴーとチョコレートを口にして、再び歩き始める。

▼山仲間はそれぞれに、訓練用の山をもっている。中央線沿線に住む人は、高尾山から陣馬山の尾根を歩く人が、小田急沿線の人は丹沢山塊を歩く人が多い。山仲間はこうして、お気に入りの山で身体を鍛えて、時々大きな山に登る。私の山仲間には団塊の世代が多い。定年退職する人が増えて、山の誘いも多くなってきた。できる限り参加したいので、予定に組み込むものの、今年に入ってから中国の取材活動に着手したために何かと気忙しく、残念なことに、九州の名山である久住山の山行をドタキャンすることになった。この時期の久住山は一帯の山肌をミヤマキリシマが覆う。ピンクの花と葉の緑が織りなす光景は圧巻だ。

▼久住山行きのお誘いは東芝の関係者で、真木明さんと、高橋文男さんからだった。山行の後、写真が送られてきた。以前、このコラムで、団子3兄弟という見出しで書いた。その時は、秋田駒ヶ岳を登った話だった。もう2年前だ。この3人は社会人のスタートが同じだから、定年退職の時期が一緒で、時間のやり繰りがつきやすい。これからますます趣味の世界でのつき合いが増えそうだ。今回のメンバーには東芝の山岳会員の方がいて、特別な計らいで、あせび小屋に宿泊したそうだ。昭和8年、筑紫山岳会が九州で最初に建てた小屋だ。その後建て替えられて、お隣に建つ、有名な法華院温泉山荘に見劣りしない。この時期、坊がつるの一帯はごった返す。芹洋子さんが歌った「坊がつる賛歌」がある。「人みな花に 酔うときも 残雪恋し 山に入り――」というような詩だ。

――やることがますます増えてきた。(BCN社長・奥田喜久男)

久住連山の平治岳の山頂に立つ、東芝の関係者たち。ご満悦の様子です
  • 1

関連記事

“だんご3兄弟”の初山行

腹を割って話せる仲間のありがたさ