北斗七星

北斗七星 2010年5月31日付 Vol.1335

2010/06/03 15:38

週刊BCN 2010年05月31日vol.1335掲載

▼出産を控えた乳牛の肛門に発信器を装着し、体温や鼓動などを常時監視する。ITを有効活用し、実際に子牛の死亡率が大幅に減ったという札幌市にあるITベンダーの事例だ。子牛の死亡率は一般的には20~30%に達する。出産の瞬間に人間が立ち会わないと、死亡する危険性が拡大する。24時間監視するのは物理的に無理なため、ITで出産間近な時刻を割り出すのだ。高価な牛を死なせずに畜産業の安定化を図る、地域活性化の事例である。

▼国内の牛農場で育てる高級牛の種牛が揃う宮崎県で、口蹄疫(こうていえき)が猛威をふるっている。日本全体の牛畜産業を脅かす一大事だ。数年前に韓国や中国で発生した際に、“対岸の火事”と捉えず、根本的な対策を打つことができていたのか疑問が残る。その間に政権交代が起きていたとはいえ、政府の対策は遅すぎる。

▼前出のITベンダーでは、畜産業向けに疫病感染を防止するソリューションをだいぶ前に提供していた。疾病や投薬の履歴、飼養牛の個体情報、獣医師の治療記録、普段の牛の様子などをPDA(携帯情報端末)からデータ送受信する仕組みだ。このITベンダーは「従業員が少なく、記録も紙ベースでは散漫になる」と、多忙を極める畜産業者の意向を汲み、簡単に防疫できるシステムを提供したのだ。政府は直ちに、このようなシステムに補助金を出し、いわゆる畜産牛の「トレーサビリティ」を確立し、悲惨な事態を防ぐ施策を打ち出すべきだ。
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