BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『変わる世界、立ち遅れる日本』

2010/05/06 15:27

週刊BCN 2010年05月03日vol.1332掲載

 英「エコノミスト」の元編集長の手になる本。日本通のエコノミストとして知られる著者が、この本を通して鳩山政権の政策に警鐘を鳴らしている。

 リーマン・ブラザーズの破綻は、日本の金融界では当初、対岸の火事とみられていた。だが、実際には世界同時不況を引き起こし、日本の産業界もその大波に呑み込まれてしまった。しかも、震源地である米国は予想よりも早く立ち直ったのに、日本は押し寄せた津波が床上浸水したままの状態にある。なぜなのか――。

 ビル・エモットは、その大きな要因として、日本が製造業依存の体質を堅持したままであることを指摘している。「日本はサービス業よりも製造業を拡張すべきなのだろうか。それで問題を解決できればいいのだが、問題は、サービス業はGDP(国内総生産)の約70パーセントを占めているのに対して、製造業は約20パーセントを占めるにすぎず、製造業の経済活動を変えるだけでは、必要な変化を起こすには足りないことである」。

 サービス業といえば漠としているが、著者は広告、テレビ、法務、卸売、ロジスティックを例に引いて、政府の規制で保護され、競争原理が働いていないと断じている。インフラ分野の電力や通信にしても、規制を緩和していくべきと提唱する。

 発展を続ける中国をはじめとする諸外国のなかでの、日本の立ち位置が読める本である。(止水)

『変わる世界、立ち遅れる日本』
ビル・エモット著 PHP研究所刊(740円+税)
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