BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『日本辺境論』
2010/04/22 15:27
週刊BCN 2010年04月19日vol.1330掲載
テレビの長寿ドラマ『水戸黄門』を取り上げた項目は、日本人の気質を象徴的に表している。「光圀自身が印籠を取り出して『控えい』と怒鳴っても、たぶんあまり効果がない」のであって、助さん格さんがやってはじめて有効となる。この二人は「虎の威を借る狐」だから、実のところどうして水戸黄門が偉いのか知らない。「でも、みんなが『偉い人』だと言っているから…」という同語反復によってしか主君の偉さを(自分にさえ)説明できない――というくだりである。
著者は、「日本人が辺境の民」であることを「よい」とも「悪い」とも言ってはいない。私たち日本人の根源的な思考法や行動の仕方を見つめなおすきっかけを与えようとしていると思える本である。(止水)
『日本辺境論』
内田樹著 新潮社刊(740円+税)
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