BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本はなぜ貧しい人が多いのか――「意外な事実」の経済学』

2010/04/08 15:27

週刊BCN 2010年04月05日vol.1328掲載

 正直、とっつきにくい本である。統計グラフを多用しており、数字を苦手とする人は敬遠するかもしれない。だが、その“第一関門”を突破して読み進むと、実に興味深い「日本の実像」が浮かび上がってくる。「日本の地方にはなぜ豪邸街がないのか」「人口が減少したら1人あたりの豊かさは維持できないのか」などなど。

 例えば、「日本の地方にはなぜ豪邸街がないのか」の項を開くと、米国と日本の実情を比較するグラフが表示されている。米国では、2009年時点で100万ドル(約1億円)クラスの住宅が多数販売されている都市は、ニューヨーク(4628戸)、マイアミ(3474戸)、ロスアンゼルス(3063戸)と続き、ほかにもシカゴ(2000戸弱)、サンノゼ(1500戸弱)がある。一方、日本は、東京の約2700戸が突出しているだけで、横浜、大阪、名古屋といった名だたる都市でもせいぜい100~200戸といった低水準である。

 この事実はどんな現象を引き起こすのか。「地方にも豪邸はあるが、それは一軒だけで、立ち並んではいない。アメリカではお坊ちゃま同士の競争があるが、日本の地方ではそれがない。二世政治家の実家を見ると、豪邸の場合にはその周りに家来のような家が並んでいる。それが、日本の政治家のレベルを引き下げているのではないだろうか」というのが著者の見解だ。巷間いわれていることが、統計のフィルターを通してみると、案外そうでもないという事実を知ることができる本である。(止水)

『日本はなぜ貧しい人が多いのか――「意外な事実」の経済学』
原田泰著 新潮社刊(1200円+税)
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