BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『中国人の金儲け、日本人の金儲け ここが大違い!』
2010/03/25 15:27
週刊BCN 2010年03月22日vol.1326掲載
“金儲け”という、少々下卑たタイトルがつけられているが、この本で議論されている内容はもっと高みの視点に立っている。底流にあるのは、日本人(とくに経営者)が「大」にこだわることの危うさに気づくべきだとする警鐘である。米国の例をみても、今回の大不況でGMとかAIGといった巨大企業から先に破綻したことが、その証というのだ。
日本についていうならば、人々が「大」にこだわりだしたのはそう古くからの話ではなく、明治維新以後の中央集権体制になってからではないかというのが、宋・田原両氏の見解だ。それが第二次世界大戦の敗戦によって、お上があてにならなくなり、日本人の心からいったん「大」信奉が薄れた。しかし、1980年代の高度成長期が終わりを告げ、「世界第二位の経済大国」であることを日本人が意識しだしてから、再び「大」にこだわる意識が頭をもたげてきたと分析されている。
では、なぜ「大」にこだわると危険なのか。それは、大企業は「人材の宝庫」ならぬ「人材の倉庫」になるケースが多いからだというのだ。華僑は、国という大樹に寄らずに生きてきたからこそ強いし、金儲けがうまいという説には納得性がある。(止水)
『中国人の金儲け、日本人の金儲け ここが大違い!』
宋文洲著/田原総一郎責任編集 アスコム(1400円+税)
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