旅の蜃気楼
三人の意はいつまでも一緒
2010/02/18 15:38
週刊BCN 2010年02月15日vol.1321掲載
▼先に旅立った“シゲ”の嬉しそうな顔が、瞼に浮かんでは消える。“若”は、もうそろそろ、三途の川を渡る頃かしら。最初に、“若”に出会ったのは共通の友人の紹介だ。もう、27年前になる。当時はパソコン産業の黎明期だ。BCNのスタッフは5人。「一緒に仕事をしないか」と誘った。「やりましょう。ただし、1年後にお願いします。いま働いている会社の仕事をきちんと引き継いでから、必ず合流します」と言いながら、“若”は自分の首に巻いていた黒いマフラーを取って、私の首に巻いてくれた。温かかった。その1年後から2010年2月3日、午後8時53分まで一緒に仕事をした。
▼その日の昼に、危篤の連絡をもらった。病院へ急いだ。ベッドの脇から声を掛けた。間もなくして、重い瞼があいた。声の方角を探して、アイコンタクトをした。闘っている目だ。「若さん、ありがとう」。BCNの営業の地盤を整えた“若”と編集の基礎を打ち立てた“シゲ”。二人とも会社の枠を超えて、業界の発展に貢献した人物だと、誇りに思っている。不思議なことに、この二人は同じ日に生まれている。「いつまでも一緒だ」。(BCN社長・奥田喜久男)
- 1