BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『障害者が思いっきり仕事できる 日本でいちばん働きやすい会社』

2010/02/18 15:27

週刊BCN 2010年02月15日vol.1321掲載

 この本を最初に手にしたとき、いわゆる“企業のPR本”かな、と思った。とんでもない誤解で、実に真摯な内容が綴られており、一気に読んだ。身体に障害をもつ人たちが在宅勤務でIT関連の仕事をこなすという、稀有な存在の会社が誕生してから、現在に至るまでの物語である。

 その会社は、OKIの子会社、OKIワークウェル(現社名はOKIネットワーカーズ)。社長に就いたのは、OKIの営業や生産管理部門で辣腕をふるってきた木村良二氏だ。辞令を受けた本人にとっては青天の霹靂だったそうだが、まさに打ってつけの人物であることが、読み手に伝わってくる。

 社員の採用条件は、身体障害者1級または2級で通勤ができないこと。こんな条件に当てはまる人たちが在宅勤務でプログラミングなどの仕事をこなしているのだ。

 この本を著した土屋竜一氏自身も筋ジストロフィー患者で、人工呼吸器を装着しながらOKIワークウェルに在宅勤務している。執筆に際しては、関係者への取材が欠かせない。だが、気管を切開していて発声ができない土屋氏には重いハンデがある。電話取材ができないのだ。「車いすの背に人工呼吸器をぶら下げ、座シートの下に人工呼吸器のバッテリーを積む。問題はこのバッテリーの容量です。人工呼吸器が止まったら命の保証はありません。私に許された時間はおよそ九時間」。信州の佐久から東京に取材に出かける氏は、文字通り“命がけ”だった。その迫力が読む側の胸に響いてくる本である。(止水)

『障害者が思いっきり仕事できる 日本でいちばん働きやすい会社』
土屋竜一著 中経出版社刊(1400円+税)
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