BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『生き残るSE』
2010/02/10 15:27
週刊BCN 2010年02月08日vol.1320掲載
「何ももたない人間が、技術とチャレンジ・スピリットで勝負するというのは、日本人がもっとも得意とする戦い方のはずだった。しかし、ITの分野では、マイクロソフトやオラクルに匹敵するような企業は、日本からは誕生していない」という危機感が、この本を著す動機となったようだ。日本衰退の大きな要因は、技術者が「現状維持でも食べていけると思い込んでいる」ことにあって、このままでは大半のSEが不幸な末路を迎えると、警鐘を鳴らす。
読み進んでいくと、ところどころに面白い表現があるのに気づく。曰く、「夜なきうどん屋には経営に必要な要素がすべて含まれている」。夜なきうどん屋を開業するには、屋台に設備投資し、原材料を仕入れて1杯いくらで売るか。接客も欠かせない。つまり、いくら腕のいい職人であっても、コスト管理、マーケティングをしっかり実行しなければ商売は成り立たない。これからのSEは、こうしたビジネスの感覚をもつ必要があるというわけだ。
経営者は常に「人工衛星」であれ、という表現も目を引く。トップたるもの、高みに舞い上がったやる気が生涯落ちてこない人間でなければ勤まらないという。
実体験に基づいているだけに、全篇を通じて有無を言わさぬ説得力をもって迫ってくる本である。(止水)
『生き残るSE 世界で通用する「ビジネス・エンジニア」の育て方』
篠田庸介著 日本実業出版社刊(1500円+税)
- 1