旅の蜃気楼

改めて考える「新聞の価値」

2010/02/04 15:38

週刊BCN 2010年02月01日vol.1319掲載

【本郷発】最近、日経新聞の記事で素晴らしい人を知った。西水美恵子さんである。元世界銀行副総裁の肩書きの方だ。この人の名前は日経で読むまで知らなかった。『人間発見』という人物連載で、1月22日号が西水さんのシリーズ最終回の記事だった。

▼この連載記事は、いつも読むとは限らない。今回は4回目で気になり、記事を切り抜いた。5回目になって感銘を受けた。この人は今の日本に必要なリーダーだと思った。緒方貞子さんもそんなリーダーの一人と思っている。緒方さんの生き方はかねてから好きで、その名前が出てくる記事には目を通している。緒方さんと西永さんのお二人に共通したものを感じる。それは、覚悟と度胸だ。早速ググッてみたら、ある人のブログに行き着いた。そこから西水さんの言葉を見つけた。「It is not what you do, but how you think about what you do, that changes the world」。素晴らしい言葉だ。“北京の蝶”の動きの始まりはきっと、この言葉だ。

▼『次に来るメディアは何か』河内孝著、ちくま新書。紙の新聞の将来はどんな形になるのか。新聞社の5年後、10年後はどんな形になっているのだろうか。この本は読まないわけにいかない。著者は毎日新聞社のOBだ。米国の新聞社が軒並み事業縮小して、M&Aや倒産する話は日本の新聞にもよく登場する。インターネットの時代が90年代半に到来して、2000年に入ってからその類いの記事が増えている。ところが、日本の新聞社に関するこの手の記事は少ない。それでもリーマン・ショック以降は、新聞社の事業内容に関する記事が増えてきた。河内さんの本はその集大成といってよい。

▼西水さんの連載を読んだ。同じ紙面には『追想録』がある。森繁久弥さん(96歳)、田英夫さん(86歳)、荒川亨さん(50歳)の3人が一緒に掲載された。荒川さんはACCESSの創業者で昨年10月23日に他界された惜しい人だ。しかし、この紙面での取り上げ方に納得した。1面で記事の価値を問う新聞の役割は、普遍的だと思う。(BCN社長・奥田喜久男)

新聞を通じて、すばらしい人物と接することができた
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