旅の蜃気楼

チャレンジ、またチャレンジ!

2010/01/21 15:38

週刊BCN 2010年01月18日vol.1317掲載

【本郷発】三十年来の友から電話が入った。倒産したので報告に行きたい、突然だが会ってくれるか、といった内容だ。年が明けて間もない8日のことだった。1月4日に2度目の不渡りを出したようだ。約束の面談時刻に近くなると、なんだか、気持ちがせいた。目の前に彼が現れ、久しぶりに会った。友人は部屋に入るなり、深々と頭を下げた。

「ご迷惑をお掛けしました。すみません」と。こちらは何の不利益も被っていないが、もう彼の口癖になっているのだろう。彼の会社は上野・不忍池の近くだ。2代目社長として、2社の印刷会社を指揮していた。新聞輪転の印刷会社のなかではそこそこ大きい。週刊BCNもこの印刷会社で20年ほど、お世話になった。彼とは年齢が近いこともあって、親しくしていた。椅子に座って話を始めると、まもなく大粒の涙が彼の頬をつたって流れ落ちた。「悔しい。リーマン・ショックで風向きが変わった。銀行の貸しはがしどころではない。ほんとに悔しい」。印刷業は新聞業界に隣接しているから、びんびんと雰囲気が伝わってくる。

▼今年に入って、業界団体の賀詞交歓会に出席した。CIAJとCESAだ。前者は情報通信ネットワーク産業協会で、出席者の年齢は60歳前後だ。後者はコンピュータエンターテインメント協会で40代の人たちが中心だ。景気の見通しはいずれの業界も2年連続で不透明だ。しかし、見通しとは裏腹に、参加者の顔に1年前の悲壮感はない。暗闇から抜け出て今、霧の中にいる。しかし、いつ晴れるのかは、予想がまちまちだ。「安全策として、悲観的にみておくことだ」「いや、春の日差しが感じられる」。いろんな意見を聞く。だが、誰一人として先行きは見通せない。当たり前といえば当たり前だ。

▼昨年からiPhoneを使い始めたことをきっかけとして、Twitterを見始めている。富士山マガジン社長の西野伸一郎さんに会った折り、Twitterをセットアップしてもらった。お気に入りは、takapon、taiga、SamFURUKAWA、knnkanda。そして12月24日のクリスマス・イヴからはmasasonが仲間入りした。この人たちの“つぶやき”には、悔しい話がない。1月9日にこんな“つぶやき”があった。「今日、とてもエキサイティングなことを考案した。考えているだけで楽しい。本当に人生って素晴らしいですよね。チャレンジするプロセスそのものじたいも楽しい」。みんなでチャレンジしよう。一度は敗戦しても再びチャレンジしよう。(BCN社長・奥田喜久男)
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