旅の蜃気楼

熱海に咲く梅の花の物語

2009/12/17 15:38

週刊BCN 2009年12月14日vol.1313掲載

【熱海発】12月6日、熱海梅園に行った。もちろん、この時期は梅ではなく紅葉を愛でるためだ。目的はほかにもあって、11月21日に熱海市長らが除幕式を執り行った「大塚実氏顕彰記念碑」を見に行ったのだ。

▼熱海駅からタクシーに乗り、熱海梅園で下車。入り口からすぐの所に、顕彰碑が建っている。碑に刻んである文面も、立派な扱いである。「…往時の優美な姿が失われつつあった中、熱海由縁の実業家大塚実氏の私財提供を受けて、開園以来の大規模な工事が行われ、清流初川の渓流を挟んで…」とある。顕彰碑の後ろには大塚商会相談役名誉会長・大塚実さんの記念植樹がなされている。梅の木である。

▼大塚さんが熱海のホテル事業に携わって25年になる。ホテルニューさがみやの経営だ。大塚実経営語録は多くある。そのうちの一つに「サービスに勝る商法はなし」がある。ホテル事業は本業とかけ離れている。それを熱海だけでなく全国で評判の高いホテルに育て上げた。梅園との関わりはまだ新しい。事の起こりは3年前だ。43歳の若さで当選した齊藤栄市長の宣言を読んで、「熱海が大好きで、熱海のために何か役に立つことはできないかと考えた」と大塚さん。この活動を支えたニューさがみやの支配人・星野寛治さんは言う。「大塚会長の思いを基に、造園業のプロの方々と青写真を描きましてね」。市役所に申請するが、遅々として進まない。関係者との話し合いでは反対される。梅園の雑木を伐採すると市役所に苦情が入る。いろんなハードルを乗り越えて1年が経過し、花が咲き始めると、その優美な姿に反対者が減り、3年が経過して、顕彰碑を建てる話にまでなった。来年からは市内の中心を流れる糸川の両岸を熱海桜に植え替えて、10年先には河津の桜をしのぐ名所にするのが夢という。総経費はざっと3億円を超える。今の景気のなかで、このお金は輝いている。記念植樹の花が咲くのは2年先であろう。この記念の梅や糸川べりが花盛りになる頃の景気は、きっと賑やかになっているに違いない。(BCN社長・奥田喜久男)

梅の花が熱海市長との縁を取り持った
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外部リンク

ホテルニューさがみや=http://www.atami-sagamiya.com/