旅の蜃気楼
一体感が生み出す力
2009/10/07 15:38
週刊BCN 2009年10月05日vol.1303掲載
▼熱海と聞いて、大塚商会が経営するホテルニューさがみやを思い浮かべるのは、IT業界の人だろう。久しぶりに創業者の大塚実さんに会った。話題は「熱海の梅園」に及んだ。120年の歴史を誇る梅園だ。早咲き、中咲き、遅咲きと開花するので、1月から3月の長い期間のイベントとなる。人が集まったのは昔の話だ。熱海に人が集まらなくなって久しい。梅も老朽化して、「花付きが悪い」「元気がない」などの評価で人の足は遠のくばかりだ。こうした状況を憂えた篤志家が私財で梅の植え替えをした。最初は地元住民の反対に遭ったが、梅の開花とともに理解を得られるようになった。その後、もみじも植えた。糸川べりには桜を植樹した。「いずれは河津の桜に匹敵する桜の名所になるよ」とビジョンを高らかに歌い上げた。一人の篤志家の活動が住民の心を動かし、熱海が四季折々の花の町に変わろうとしている。「僕は、人が10年かかるところを2年でやるからね」。久しぶりの大塚節はこの時期にあって、なお健在だ。熱海に人が集まり始めている。人の集まりには素晴らしい一体感が生まれる。(BCN社長・奥田喜久男)
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