旅の蜃気楼

効果てきめん、秘湯のご利益

2009/08/24 15:38

週刊BCN 2009年08月24日vol.1297掲載

【北アルプス発】富山県は山が多い。どの街から見ても東の方角は連峰が連なる。険しい山ばかりだ。雪を頂いた山は、どこからともなく水をにじみ出させている。それが小さな沢を作り、沢が集まって少し大きな流れとなる。沢の名前がついてはいるが、薬師沢小屋のある辺りの流れは唸りをたてている。その小屋は、薬師岳一帯の水を集めて大きな薬師沢となり、黒部川の本流に合流する場所に建っている。

▼薬師沢小屋からさらに奥に入った。大きな石がごろごろと続く黒部川の右岸を下り、いくつかの沢を渡渉して山に入る。沢歩きは好きだが、相変わらず登りは苦手でつらい。「フーフー」と息を弾ませながら、目的地である高天原小屋まで踏ん張る。ここはその昔、鉱山だった。その飯場が今は小屋になっている。鉱山当時に使った金槌などの道具が小屋の脇にあった。宿泊定員は50名。ほぼ当時のままの姿のようだ。どんな生活であったのか興味が湧く。ここには秘境の露天風呂・高天原温泉がある。温泉から20分ほど歩くと神秘的な竜晶池がある。温泉までは薬師沢小屋を出発しておよそ6時間の歩きだ。雨だったから、歯の食い縛り方は並ではない。

▼やや小降りになった。視界が開けてきた。さっそく露天風呂に入る。沢の音を聞きながら、露天風呂に浸かる。「いい湯だな~」。歌の文句がすらすら出てきてしまう。疲れた筋肉をほぐすことにする。湯の花が他の場所の硫黄温泉に比べて多いように思う。お湯で顔をぬぐった。おや、ひりひりする。そうだ、このところ顔にアトピーができているから、ちょうどそこがひりひりするのだ。硫黄はアトピーに効くと聞いていたから、何度も顔を硫黄温泉で洗った。小屋に戻ってしばらくすると、アトピーの辺りの皮膚が固形化して、その下にすっきりした地肌がでてきた。高天原温泉の硫黄はアトピーによく効く。高天原までは登山口から2泊3日はかかるから、なおさらありがたいのかもしれない。「ああ、いい湯だな」。(BCN社長・奥田喜久男)

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