旅の蜃気楼

上野のお山は今年も人の波

2009/04/13 15:38

週刊BCN 2009年04月13日vol.1280掲載

【上野発】桜の花が満開です。上野のお山にはわんさかと人が出て、花見を楽しんでいました。若いカップルがピンクの花の下で、石に座ってソフトクリームを食べている。それぞれ仲良く手に持って食べている。1個を交互に食べるほどの距離(間柄)ではないらしい。二人一緒に座りながら、微妙な間隔がなんとも新鮮で、見入ってしまった。食べ終わって、女性がバッグからデジカメを取り出した。「カシャ!」。画面で写りぐあいを確認して、二人で「にっこり」。なんとも初々しい。

▼不忍池は上野の山と、本郷の山間に位置する。この窪地を流れる藍染川の注ぐところにできた池だ。池の真ん中に寛永寺の弁天堂がある。この一帯は徳川将軍家ゆかりの地で、江戸時代から花見を楽しんだという。花見はずいぶん歴史のある大衆文化なのだ。感心しながら池の中州を歩いて弁天堂に向かう。湖面はボートで一杯だ。周辺は西側がビル、東が上野の杜だ。池がぽっかり開いて、空が広がっている。今年は池周辺の風景が少し違う。池の端に、五重塔に似たホテルがあったのをご記憶だろうか。それが建て替わるのだ。横山大観記念館の隣に大谷ビルがあったが、これも建て替えで現在、取り壊し中だ。そのせいか、すっきりしている。東大病院の新しい病棟がよく見える。患者の方々も、上野の桜を部屋から楽しまれたのではないか。特別なプレゼントだ。

▼花見には宴会がつき物だ。花を見に行くんだか、宴席を楽しみに行くんだか。今年も大勢の行列だ。人の波に揉まれながら上方に目をやると、なんともすばらしい光景が広がる。花のトンネルだ。人の波が行き交う道の脇ではブルーシートを敷いて、宴たけなわだ。例年になく、静かな宴席だと感じた。昼の部だからであったろうか? 飛び交う言葉が、中国語、韓国語、東南アジア語、英語、中東アジア語と、まるでG20のような集まりだ。上野公園はこれから、紫陽花、蓮の花と素敵な季節が続きます。どうぞ、お出かけください。(BCN社長・奥田喜久男)
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