旅の蜃気楼
奥田流“路地裏の経済学”
2009/04/06 15:38
週刊BCN 2009年04月06日vol.1279掲載
▼そういえば、床屋も一種の社会のバロメータかもしれない。月に1回は床屋に出かけている。世間話をするのが好きな店主で、髪が整う頃になると、いつも社会の動きに明るくなっている。床屋という職業は社会の健康診断をしているようなものだと感心していたら、それどころではないようだ。「私たちはいつもお客様の頭を洗っているでしょ。お疲れの人の頭を洗っていると、指の先が痛いんですよ」。疲れている人は、頭の皮膚がパンパンに突っ張っているのだという。髪の毛そのものも細くなったり太くなったりと、その人の健康状態が現れるらしい。なんとなく説得力があるので、床屋にいくといつも頭の皮膚の状態を聞くことにしている。「最近のお客さんの皮膚の状態はいかがですか?」「う~ん、そうですねぇ」「8割の方はパンパンですか?」。お客のことなので言いにくそうだったが、どうもそうらしい。
▼喫茶店でもいろいろな話を聞くことにしている。景気が悪いときには客は増えるという。暇だから、「お茶でも飲もうか」ということらしい。景気が悪いと、商売は上がったりと思っていたが、逆だった。そこで「最近、景気がいいんじゃないの」と、喫茶店主に尋ねてみた。すると「いやだめだめ。お客さんがよその店に移っちゃうんだよ」。なるほど世の中の現象は循環しているんだ。それにしても一筋縄ではいかないものだ。だからこそ、面白みもある。(BCN社長・奥田喜久男)
- 1