北斗七星

北斗七星 2009年1月12日付 Vol.1267

2009/01/12 15:38

週刊BCN 2009年01月12日vol.1267掲載

▼1月初旬、ITベンダーから社長らの「年頭所感」がマスコミに届く。2009年の経済天気予報は「大荒れ」などと、きたるべき市場環境の変化に備える気構えを拝察できる。そのなかで風変わりな目標を掲げた文面が目にとまった。インフォテリアの平野洋一郎社長は昨年、「毎日一度、空を見上げる」を目標とした。閏年の昨年、366日間、ずっと空を見上げたそうだ。

▼経済には暗雲が垂れ込めたままだが、「空はいつもの年と変わらず」。日本の空は「平穏」を保っていたと述懐。今次の「極めて人工的な荒波」のなかでは「ビジネスの原点(物々交換)」に戻ると付け加える。「見えない相手」に大量販売するのでなく、1社1社の「相手が欲する製品を渡し対価をいただく」のが原点ということだ。



▼私自身も同様の目標を掲げて試みた経験がある。昼の空でなく毎日形を変える「月」を1年間見続けた。東京・東村山市にあるハンセン病患者の〝収容施設〟ともいえる「国立療養所多磨全生園」で外出できない知り合いの患者を訪ねた際、施設の中と外で「満月」を見た。この時、「月」の表情は変わらなかった。悪法「らい予防法」が廃止になり、強制収容が終わったのは10年前。それまで〝隔離〟は続いた。そこに世の不条理を感じ夜空を見続けたのだ。

▼平野社長は続ける。「じっと待つことはあり得ません」。荒波にさらされることが分かっていても行動すべきと訴える。いまの不条理を覆すためにも地道に行動を起こすことにしよう。
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