旅の蜃気楼
解けたぞ! 旨い酒の秘密
2008/09/15 15:38
週刊BCN 2008年09月15日vol.1251掲載
▼山形の名山・月山に魅かれて18年になる。今年は南斜面の姥沢から頂上を目指した。リフトがあって、往復3時間の、お気軽コースだ。青空にうっすらとした秋の雲が流れている。ニッコウキスゲが開花して緑の草じゅうたんに黄色が映える。この山は牛の背中のようにのびのびと広がっている。この景色が好きだ。どかーっとしている。
▼下山して山形に宿をとった。翌日、次の山を目指したが、天候が南から悪化している。残念だが、予定変更。思案した結果、駅にある観光案内所に出向いた。「確か、山形には『十四代』という美味しいお酒がありますよね」「ええ、高木酒造です。少しお待ちください」。そこでパンフレットを開きながら、蔵元の説明となった。山形駅から奥羽本線を北に向かう。村山駅で下車。タクシーに乗り込む。「運転手さん、高木酒造、わかりますか」「十四代ね。少し遠いよ。行っても蔵の中を見せてくれないよ。お酒も売ってないし」。それでも行ってみることにした。
▼20分ほどで到着。380年の風格を感じさせる蔵元だ。「こんにちは」と事務所らしき玄関で声を掛ける。女性が対応に出た。やはり蔵の中は見せてもらえなかったが、「どうぞ、どうぞ、お飲みください。そのお水でお酒を造っています」。この水なんだ。月山から続く葉山が育んだ水だ。「旨い。『十四代』の味がする」。そう感じた。さっそく、酒屋に行く。『十四代』のほか、大吟醸の『黒縄』、本醸造の『朝日鷹』がある。「1本ずつください」。ここから交渉が始まった。「720ml瓶の十四代は、朝日鷹を2本、1升瓶の黒縄は朝日鷹を4本一緒にお求めください」。抱き合わせ販売だ。東京まで発送をお願いした。お酒と本人がほぼ同じ日に自宅に着いた。葉山の水を並べて飲んだ。旨い! 水だ。秘訣は水だ。長年の疑問が解けた。ますます山形が好きになった。(BCN社長・奥田喜久男)
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